東京大学 生産技術研究所の溝口 照康 准教授、小田 尋美 大学院生(研究当時)、清原慎 大学院生、東京 
 大学 大学院新領域創成科学研究科の津田 宏治 教授らの研究グループは、機械学習(注1)の転移学習 
 (注2)という技術を活用して人工知能が繰り返し成長することで、物質の界面(注3)の構造を決定す 
 るための計算コストを1/3600まで削減することに成功しました。   
 界面は物質中に多数含まれる欠陥で、その構造が物質のさまざまな機能と密接に関係しています。そのた 
 め、界面構造を決めることは物質研究の中でも最も重要な研究課題の1つです。しかし、界面には無数の 
 種類が存在し、さらにその一種類の界面の構造を決定するだけでも、数千〜数万回という膨大な量の理論 
 計算(注4)が必要でした。   
 本研究グループは、機械学習により作成した人工知能を使って界面の構造を高速に決定する手法の開発に 
 取り組んできました。今回、探索空間(パラメータ)を従来の3次元から74次元に拡張し、さらに転移 
 学習という技術を利用しました。転移学習では、ある問題を解く際に作成した人工知能を、関連した別の 
 問題に利用します。前に学習した知識を使って新しい問題を解くことで人工知能は“賢く”なることができ 
 ます。これを繰り返し行うことで人工知能は更に賢くなっていきます。   
 研究グループは開発した手法を使って、33種類の界面構造を系統的に決定しました。これらすべての界 
 面の構造を、本手法の力を借りずに決定するためには、実に1,650,660回もの膨大な計算が必要 
 になります。もしこの計算を一台だけのコンピューターで計算すると30年以上の時間を要します。実際 
 には並列計算機で実施しますが、それでも数週間の計算が必要です。一方、今回開発した手法で人工知能 
 に過去の経験を学習させる(計算対象を絞り込ませる)と、462回の計算で33種類すべての界面構造 
 を決定することができ、計算コストを約1/3600に削減することに成功しました。つまり、1台のコ 
 ンピューターがあれば数日ですべての界面構造を決定することができます。   
 本手法はたくさんの界面構造を網羅的かつ系統的に決定する上で非常に有効です。界面は物質の機能に決 
 定的な役割を果たしています。本手法を利用することで、界面機能の理解が深まり、高性能な物質開発が 
 さらに加速されることが期待されます。    
https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP463137_T11C17A1... 
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