■長期滞在宇宙飛行士の約3分の2が罹患
長期間の宇宙滞在を終えて地球に帰還した宇宙飛行士の多くが視覚障害に悩まされ、なかにはずっと治
らない人もいる。ある研究者たちが何年にもわたる考察と調査を経て、ついにその原因を特定したと考
えていることを米放射線学会で発表した。脳を浸している液体が、不適切な場所に蓄積して眼球を押し、
地球に戻ってきてからも元に戻らないほど一部を平らに押しつぶしてしまうのだ。
この状態は視覚障害脳圧症候群と呼ばれ、国際宇宙ステーションに長期滞在した宇宙飛行士の約3分の
2が患っている。
この不思議な症候群をNASAが最初に発見したのは2005年のことだった。宇宙に出発する前には1.0
だった宇宙飛行士ジョン・フィリップス氏の視力が、半年間の宇宙ステーション滞在後に0.2まで低下
していたのだ。徹底的な身体検査の結果、フィリップス氏の眼球の後ろの部分が何らかの原因で平らに
なり、視神経に炎症も起こしていることが明らかになった。
発表を主導したノーム・アルペリン氏は、「人々は当初、この現象をどう理解すればよいか分かりませ
んでしたが、2010年には、この現象への懸念が高まっていました。一部の宇宙飛行士の眼球に深刻な
変化が起こり、地球に帰還しても完全には元に戻らないことが明らかになったからです」と説明する。
■体液が犯人ではない?
何かが宇宙飛行士の目に圧力をかけていることは分かっていたが、NASAの医師たちは原因を特定でき
なかった。有力だったのは、微小重力状態になると体全体の血管内の体液(血液とリンパ)が地上とは
異なる場所に移動することと関連しているのではないかという説だった。
NASAによると、宇宙飛行士の体内では2リットルもの体液が足から頭に向かって移動するという。科
学者たちは、こうして移動した体液が脳にかかる圧力を高め、最終的には目に影響を及ぼすのではない
かと考えた。
けれども昨年、この現象を調べた実験の結果が発表されると、謎はいっそう深まった。
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