米国にある世界最速のスーパーコンピューター「Summit(サミット)」が、新たな記録を樹立した。気象研究の一環として深層学習アルゴリズムを訓練させたところ、「1秒間に100京回」という史上最速の記録をマークしたのだ。このプロジェクトはいかになし遂げられたのか。そして、気象予測の未来に何をもたらすのか?
米西海岸では、世界有数の企業が人工知能(AI)の性能を上げようと競い合っている。グーグルは大量の高性能プロセッサーを使った実験を、フェイスブックは35億枚もの写真を用いた試みを鼻高々にひけらかしているのだ。
しかし2018年の暮れ、テネシー州東部で実施されたあるプロジェクトがひっそりと、ほかのAI研究所が及びもつかないことをなし遂げた。手綱を握っていたのは米国政府である。
この記録的なプロジェクトで用いられたのは、オークリッジ国立研究所がもつ世界最高のスーパーコンピューター「Summit(サミット)」だ。Summitが栄冠を手にしたのは2018年6月のことで、米国にとっては中国から5年ぶりに最速の座を奪還したことになる。気象研究の一環としてSummitに機械学習の実験を行わせたところ、史上最速の記録をマークした。
◆100年分の気象シミュレーションを解析
Summitが占める面積はテニスコート2面ぶんで、実験では27,000個以上のGPUを使用した。利用目的はAIの最前線を支える技術である深層学習アルゴリズムを訓練することにあり、Summitはその作業を1秒間に100京回(スパコン業界で言うところの「1エクサフロップ」)の計算速度で実行することができる。
「深層学習がこれほどの速度で実行されるのは、これが初めてのことです」と、ローレンス・バークレー国立研究所の国立エネルギー研究科学計算センターで研究チームを率いるプラバート(この呼び名で通っている)は語る。彼のチームは、Summitの本拠地であるオークリッジ国立研究所の研究員と共同で研究を行った。
世界最高性能のコンピューターによるAIが主に取り組んだのは、その能力にふさわしい世界最大級の問題──つまり気候変動だ。
テック企業では、人の顔や道路標識を認識できるようにアルゴリズムを訓練している。これに対して政府の科学者たちの目標は、膨大な数の気象シミュレーション(3時間の気象予測を100年分)を通して、サイクロンなどの気候パターンを把握することにある。もっとも、このプロジェクトでどのくらいの電力が消費され、二酸化炭素が排出されているかは定かではない。
◆グーグルやNVIDIAも協力
Summitを用いた今回の実験で、AIと気象科学の双方の未来が大きく変わることになった。従来は核爆発やブラックホール、新物質などの物理的・化学的なプロセスをシミュレートしてきたスーパーコンピューターに、深層学習を適用できることを証明したのだ。また、コンピューターの性能を上げるほど、機械学習の恩恵が大きくなることもわかった。将来起こる技術革新がさらに楽しみになる結果だ。
以下ソース
https://wired.jp/2019/02/18/fastest-supercomput...
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