昨年来、米中両国のテクノロジー覇権争いが過熱している。世界を席巻する米GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)に対抗するのは、中国テクノロジー企業群BATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)である。立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏は、そんな米中巨大テック企業8社の最前線を活写した『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』をこのほど上梓。中でも、田中氏はいま「中国企業の自動車テクノロジー」の驚異的な飛躍に注目しているという。今年に入って何度も訪中しているという田中氏がその最前線を緊急レポート!
◆百度(バイドゥ)の自動運転バスに乗ってみた
日本の自動車メーカーに、自動車産業に参入してきたグーグルに脅威を感じている人は多い。しかし、百度(バイドゥ)という中国ネット検索最大手の企業を意識している人などほとんどいないのではないか。
世界の自動運転覇権の構造はこの1年ほどでがらりと変わった。バイドゥが蓄えている実力は、グーグルのそれをもしのぐほどに飛躍したからだ。
今年3月、筆者は北京滞在中にそれを実感することとなった。
北京にある、バイドゥが運営を受託している公園を訪れると2台の青い周遊バスが走っていた。いくら目を凝らしても運転席があるはずのフロントガラスの向こう側に運転手は見当たらない。理由はバスに乗ってみればすぐにわかる。そのバスには運転席もなければ、アクセル、ブレーキのペダルもない。それどころかハンドルすらも存在しない。完全自動運転のバスだからだ。
バスには一応、監視をするための職員が乗り込んでいるが、その職員がこのバスを制御することはない。あくまで安全運行を担保しているのはバスの車内外に搭載されたセンサーとAIなのだ。
バスに乗り、道なりに正確に進行していくさまを興味深く眺めていた筆者には、前方から中国人の老夫婦が歩いてくるのが見えた。筆者はぶつからないか少し不安を覚えたが、バスは老夫婦とすれ違う直前にほんの少しだけ減速をはじめ難なく通り過ぎてみせた。
バスと老夫婦の距離は1メートにも満たない。すれすれで、また安全正確に通過するバスに、私と同行していた同僚たちは思わず「すごい!」「こんなせまい間隔で、通り抜けたぞ!」と歓声を上げた。
中国人老夫婦もすれ違いざまでもバスを警戒することなくにこやかに談笑していたことが驚きだった。彼らはこのバスの自動運転に危険をまったく感じていない。バイドゥの自動運転バスは、すでにこの公園を利用する中国人たちの信頼を獲得しているのだ。
しばらく進むとバスはおもむろに停車した。信号機もない、バス停でもないその場所で、なぜ停車したのか。あたりを見渡すと、ジョギング中のランナーが迫ってきていた。彼らが無事、道路を横切っていくと、バスはまた走り始めたのだった。
安全かつ、完璧な自動運転を目の当たりにした私と同僚の口から、次に出たのはため息だった。
「ここまでテクノロジーは進んでいるのか…」
以下ソース(p.2〜)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/63995?page=...
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