「特殊ペプチド」と呼ばれる天然には存在しない化合物を大量に合成し、そこから新薬につながるものを素早くスクリーニングする技術を開発した東京大学大学院教授の菅裕明。かつて“異端”とされた研究を、いかに次世代の創薬プラットフォームとして期待されるへと存在へと転換していったのか。その道のりを訊いた。
特殊な構造を持つアミノ酸を組み込んだ化合物「特殊ペプチド」を効率的につくり、1兆種類もの候補から薬になりそうなものを素早く見つけ出せる──。これまで長い期間と多大なコストをかけていた新薬の開発を、圧倒的にスピードアップする革新的な創薬プラットフォームをつくり出したことで世界的に注目されている研究者がいる。
東京大学大学院教授、菅裕明。髪を結んだミュージシャンのような出で立ちは、研究者として“異端”といえるかもしれない。だが、未来の創薬の基盤を生み出した彼の言葉は、異端を先端へと転換してゆく不思議なエネルギーに満ちていた。
──研究室に入って最初に、ギターが飾られているのが目に付きました。棚にはギターケースもたくさんあります。大学の研究室といって抱く一般的なイメージとは、だいぶ違いますね。
これはごく一部。ぼくはギターばっかり弾いている“普通の人”なんです。有名な科学者が賞を受賞したりすると、若いころに何かの本を読んで感動して科学者になった……といったエピソードを授賞式でスピーチしたりしますよね。でも、ぼくにはそういうエピソードがまったくない。みんなすごくいいことを言うけど「ほんとかな?」って(笑)
実家は岡山の家具屋で、親の商売を継ぐつもりでした。ぼくは小さいころから木材が好きで、ギターもそのうちのひとつ。地元でギターを弾いていればいいやと思っていたので、何の疑問ももたずに地元・岡山の大学に進学しました。
──でも、そこでは理系の学部を選ばれたわけですよね。
化学を選んだ理由は、高校のときに化学が好きだったからというだけなんです。それで工学部に入って化学をやり始めました。でも、大学の間はそんなに面白いと思ってなかったんですよ。芽が出なくて、ぼくの才能が足りていないというのもわかっていたので。当時は大学の先生になろうなんて思っていないし、研究者として生きていこうとも思っていませんでした。
どうして面白くないのかを考えると、勉強はすでにわかっていることを教えてくれるわけで、わからないことを教えてくれるわけではない。でも本当に面白いのは、わからないところを自分で探求することなんです。それはジャズにも通じていて、ジャズの場合は即興演奏のなかに新しいことを探求する。マイルス・デイヴィスはまさしくそういう人でした。
スイスへの留学時代に生命の起源の研究に出合ったことが、菅裕明にとって大きな転換点のひとつになった。
以下ソース(長文)
https://wired.jp/waia/2019/15_hiroaki-suga...
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