中国の研究チームが達成した「量子超越性」が意味すること
量子コンピューターが従来型コンピューターの限界を超えた計算能力を示す「量子超越性」を、中国の研究チームが実証したと発表した。
グーグルに続く重要な成果だが、超伝導を用いたグーグルとは違って光子を用いたことに大きな意味がある。
このふたつのシステムの仕組みは異なる。グーグルは超低温、超電導の金属によって量子回路を構築している。
これに対して安徽省合肥市にある中国科学技術大学のチームは、光の粒子である光子を操作することによって量子超越性を実現した。
量子コンピューターの潜在的な能力は、量子ビットと呼ばれる単位から生まれる。
従来型コンピューターのビットと同様に「0」と「1」を用いてデータを表すが、量子ビットでは量子力学的な原理によって、「0」と「1」の両方の可能性をもつ「重ね合わせ」と呼ばれる独特な状態が存在する。このため十分な数の量子ビットがあれば、従来型コンピューターでは不可能なほどの“早道”で計算できるわけだ。また、連携して動作する量子ビットの数が多いほど、このメリットは大きくなる。
グーグルの実験は、54個の量子ビットを搭載した「Sycamore(シカモア)」と呼ばれる超電導チップを、絶対零度をわずかに超える温度まで冷却して進められた。量子ビットのひとつは破損したが、慎重に選ばれた統計学の問題の計算では、残りの53個の量子ビットだけでも従来型コンピューターの能力を上回っている。量子コンピューターが有意な計算を実行するために必要な量子ビットの数は不明である。専門家の推定によると、数百個から数百万個の間だという。
中国のチームもまた統計学的なテストを利用して、量子超越性の達成を主張している。だが、中国のチームらが用いた量子データは、実験台に配置された光回路を鏡に導かれて通過する光子の形態をとっている。プロセスの最後に読み取られる光子が量子ビットに相当し、これによって計算の結果がわかる仕組みだ。研究者らは、 量子コンピューター「九章」を用いて最大76個もの光子を測定したと報告している。ただし、平均をとるとそれより少ない43個だった。
中国の「九章」とグーグルの「Sycamore」には、ひとつ違いがある。光子を使ったプロトタイプの場合、再プログラムして別の計算を実行することは容易ではないのだ。というのも、設定が光回路にハードコーディングされているからである。
今回の実験を主導したのは、物理学者の潘建偉(パン・ジャンウェイ)が率いる大規模な研究チームだ。彼らは量子技術の強化を目指す中国政府の戦略の恩恵を受けており、記録的な距離にわたって量子暗号化を実証するなどの実績を上げている。量子暗号衛星「墨子」を利用して、中国とオーストリア間のヴィデオ通話の暗号化に成功し・・・
https://wired.jp/2020/12/05/china-stakes-claim-...
返信する