理化学研究所環境資源科学研究センターと東京大学大学院工学系研究科からなる研究チームはこれまでに、深海に伝導性の高い岩石が豊富に存在し、またマグマのエネルギーが岩石を介
して電気エネルギーに変換されることを突き止めていた。そこで注目を集めたのが、そのエネルギーを利用して生きる生物がそこには存在するのではないか、ということだ。
研究チームは、それを特定するべく、化学合成細菌の一種Acidithiobacillus ferrooxidans(A.ferrooxidans)に着目した。様々な研究の結果、A.ferrooxidansは細胞の代謝活動において電流
を増幅すること、その電流が二酸化炭素から有機物を代謝する為に活用されていること、そして極めて微弱な、つまり海底のマグマが自然に生成する程度の微弱な電位差によって生きられ
ることが明らかになった。
この発見は、光合成生物と化学合成生物と並ぶ、電気合成生物という生命相の存在を明らかにするものである。今回その生態が解明されたA.ferrooxidansはほんの小さな微生物であるが、
もしかしたら人類にとってまだほとんど未知である深海の底には、電気合成生物を食物連鎖の原点とする「電気生態系」が広がっているのかもしれない。
また、この研究は二つの画期的な視点を提供する。一つは、ごくわずかな電気エネルギーで生命が生きられるということは、その機構をさらに解明することによって、人間の作る電気機器
の分野にも何かの新しい知見がもたらされるのではないか、ということ。そしてもう一つは……地球外生命体についてである。
化学合成生物が発見された時にも似たようなことが言われたのではあるが、もしかしたら、宇宙のどこかに電気の嵐が吹き荒れる星があるかもしれない。そして、その星には、そのエネル
ギーを活用して暮らす、地球生命とはまったく別の生態を持つ生命圏が存在するかもしれないのだ。
電気を喰らって生きる怪物、などというのはこれまではSFかファンタジーの中だけの話であった。だが、今回の発見はそれを塗り替えたのである。
http://jp.techtimes.com/articles/10219/20150925/a-ferr...
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