「ある大きな組織による偵察行動がインターネット上で日夜行われている」
ネット上で偶然目にした情報セキュリティーに関するある論文にあった表現です。最初はSF映画のような話だと思いましたが、そこにあった“インターネットノイズ”という言葉が頭にひっかかり取材を始めました。(科学文化部記者・鈴木有)
◆“インセプション” -端緒-
大手電機メーカーに勤める木寺さん(仮名)
インターネットノイズに詳しいという大手電機メーカーに所属するある研究者。交渉の末「匿名」で話を聞けることになりました。
この研究者(以下、仮名・木寺さん)によると、インターネットノイズとは「意図が不明で無害な信号」だと言います。こうしたノイズがインターネットの中に存在していることは2000年に入ってからわかってきました。
例えば私たちがWEBサイトにアクセスする場合、サーバー(ホームページを表示するために必要となる情報を格納しておくコンピューター)にページを見せて欲しいという内容の信号を送り、それをサーバーが返してくれることでページが表示されます。これは明確な意図がある通信です。
「意図が不明」というのは目的がはっきりしないことを意味します。こうした“ノイズ”は通信装置の不具合などでも発生し、通信量を示すパケット数も小さいため私たちが普段パソコンを使用する時にも現れていますが無視できる信号として扱われ、多くの人は気にせずにインターネットを使っています。
木寺さんは、ひとつひとつを見ても何も分からないこのノイズを大量に集めて解析することで「その“意図”を垣間見ることができる」と話しました。
◆“コンタクト”-未知との遭遇-
木寺さんがノイズに注目したきっかけは2014年7月。WEBのサーバーを置いたところWEBサイトを作っていないのに何者かからサイトを開くように要求する信号が届きました。その信号は正確に24時間間隔であり毎回違うIPアドレスからでした。
IPアドレスが違うということは、異なるパソコンやスマートフォンといった端末から送られてきていることを意味します。この通信の内容を解析するとどういう訳か海外のあるホテルの予約サイトにアクセスしようとする信号が含まれていました。
その信号が求めていた情報は「国名」「都市名」のリストだけで、予約をとろうとするようなものではありませんでした。サイバー攻撃のような不審なサインはみられず、最初はあまり気にとめていませんでした。ただ一応、興味本位でインターネットで調べてみたところ、同様の予約サイトの信号が世界各地で複数観測されていることがわかりました。
謎のアクセスは世界中をターゲットにしているのではないか。
木寺さんは謎の通信の正体を調べてみようと、あるとき通信に対してそのまま送り返してみました。ノイズに反応したのです。するとそれまで24時間間隔だった信号が、なんと1時間おきに来るようになりました。
ファーストコンタクト。
「人の意図」の存在を初めて感じた瞬間でした。
以下ソース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210317/k1001291907...
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