安生: 私は、ラピダスはユニークなポジショニングのビジネスをやろうとしていると分析しています。
他社より一歩遅いかもしれないけど、日本の装置メーカーといっしょに、高い信頼性を作り上げていく。
「不良故障率の低い半導体チップ」を提供していこうとしているのだと考えています。
──不良故障率とは?
安生: これは歩留まりとは異なりまして、大量生産された製品の、市場に出てから一定期間内に故障する確率ですね。
一般的にグローバル半導体企業の不良故障率は数百ppmあたりではないでしょうか。
そのような現状のなか、ラピダスは「高信頼性を実現する」と宣言しており、
それはつまりダブルディジット(2 ケタ) からシングルディジット (1 ケタ)ppm も視野に入れた故障率の半導体の製造を目指しているのではないかと考えています。
自動車メーカーが調達する半導体は極めて厳しいクオリティガイドラインをクリアしなければなりません。
医療や発電所などのインフラの場も高信頼な半導体を求めています。軍事産業や宇宙産業もそうでしょうね。
そこで、特に先端半導体では高信頼な半導体を入手できないケースも想定して、安全策を二重三重に巡らせて冗長性をもたせ、故障したときは機材ごと切り替えるような体制を整えています。
しかし、「高信頼性」な「先端半導体」が手に入るなら、予備の機材を節約できます。
ラピダスが狙っているであろうダブルディジット~シングルディジットppmのアプローチは、その点に価値があるのです。
高信頼性という付加価値を持つ、2nmクラスの先端プロセスを手がける工場はまだ世の中には存在していません。
──どうやって信頼性の高い半導体を作るのですか。
安生: 高信頼性を実現するであろうキーポイントですが、ラピダスは半導体製造の前工程*において「枚葉式」を採用するそうです。これがすごいことなんですよ。
*半導体製造の前工程:シリコンのウェハー(薄板)を加工し半導体と回線を構成する行程。
通常、半導体の前工程は、数枚から数十枚ぶんを一気にまとめて処理します(多枚処理)。
低コストで量産しやすい反面、不良故障率は上がります。
しかし、枚葉式は、ウェハーを1枚ずつ丁寧に処理をしていく。
ウェハーは1枚ごとに微妙に異なる反りや特性の違いが発生しますが、それを踏まえて1枚ごとに加工を微調整できる。
何千もの工程をウェハーの状態に合わせながらリアルタイムに修正しながら作っていくので、より完成度が高いものができあがるんですね。
枚葉式を選択する時点で、そもそも大量生産は目指していないんです。
その代わり、製品一個一個のクオリティを上げていく。
ラピダスのやろうとしていることはそこじゃないかと考えています。
https://www.gizmodo.jp/2025/06/rapidus-high-reliabili...
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